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9月18日(金) 参院本会議 安全保障法制政府案 反対討論全文

平成27年9月18日(金)参議院本会議で行なわれた、安全保障法制政府案に対する小野次郎 総務会長の反対討論の全文です。


反対討論の様子


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安全保障法制政府案に対する反対討論 全文(文案)


2015年9月19日
参議院議員 小野次郎


維新の党の小野次郎です。

私は、会派を代表して、政府提出の安全保障法制関係二法案に対して、満身の憤りを込めて反対の立場から討論を行います。
議長、与党議員を含めた同僚議員の皆様、まず、私は特別委員会においてあのような強行採決が行われたことを非常に残念に思います。委員会における議事録を確認しても、鴻池委員長の着席と退席の事実の記載しか残されておらず、何の採決が行われ、どのような結果になったのか、外形的には全く形跡が残っておりません。このような委員会採決は不存在と言うべきであり、本会議への上程など、その後の手続は法的に無効であります。
また、政府案に対する対案を示して建設的な議論をすべきだと言ってきたのは安倍総理御自身であり、中谷防衛大臣を始め自民党高村副総裁や公明党北側副代表など政府・与党の皆さんであり、鴻池委員長御自身もそのように発言されておられました。にもかかわらず、委員会において並行審議されていた我が党提出の領域警備法など八法案については、昨日の議事の中で政府案採決に先立って採決の手続が取られなかったことは、法案提出者に対して極めて非礼であり、背信行為であります。強く抗議し、関係者の皆さんの猛省を求めます。


さて、今回の政府案の内容をつぶさに見れば、根本的に不備と欠陥と矛盾だらけであります。私たちも、安全保障環境の変化に対応した安保法制の整備は重要であると認識しています。しかし、それは何よりも我が国自身が直面する安全保障上の課題にジャストミートしなければならないし、憲法適合性の枠内のものでなければならないことは言うまでもありません。
切れ目のない安全保障は重要であっても、憲法無視の歯止めが掛からない安全保障や、対米追従で止めどのない安全保障は許されるものではありません。
その意味で、特に島嶼部などの領域警備を強化する領域警備法を政府が整備しないのは重大な欠陥です。平時において北朝鮮による拉致事件などから一人一人の国民を守るためにも、領域警備力強化の法整備を強く訴えます。


我々維新の党は、これまでの個別的自衛権と集団的自衛権の解釈の境界線が常に自動的に憲法適合性の合憲と違憲の境界となるわけではないという一点においては、昨年七月一日の閣議決定の内容を共有するものです。我々は、憲法適合性の枠内で専守防衛を堅持しつつ、国際的にも容認される自衛権の再定義に努めてまいりました。そして、目的、手段、効果のいずれを取っても、自国防衛のために行う必要最小限度の武力の行使はこれにかなうものであります。


そもそも、集団的自衛権行使を認める今回の存立危機事態が、元最高裁長官、最高裁判事、歴代内閣法制局長官、さらには日本中の憲法学者など、かくも大多数の法律専門家から何ゆえ違憲であるとNGを突き付けられているのか、立法者である我々は、専門家の意見にもっと謙虚に耳を傾ける責任があります。
専門家が存立危機事態を違憲と判断する理由には幾つかのポイントがあります。私は、存立危機事態の構成要件の実質的内容自体が深刻な憲法上の問題を招いていると考えます。つまり、第一に、我が国に向けられた武力攻撃が想定されない場合、すなわちホルムズ海峡の機雷封鎖による原油輸入の途絶のようなケースにも我が国による武力行使の対象としている点であります。これでは、常に先制攻撃の批判を免れないことになり、もはや平和主義の柱である専守防衛の原則を維持しているとは言えません。
また、第二に、最も厳格であるべき国家の軍事力の発動の要件を定める法規範は、誰の目にも明らかなくらい具体的かつ外形的基準によらなければなりません。存立危機事態の構成要件が余りに抽象的で文学的な形容句の羅列になっており、結局のところ、事実認定をその時々の政府の総合判断に一任しており、憲法上の十分な歯止めとはなっていません。これら二つの問題は、憲法解釈と国の安全保障の関係を実質的な立場から捉えようとする向きにおいても、存立危機事態が違憲であると判断される実質的な理由となっています。
安倍総理は、何が何でも今回の安保法制によって集団的自衛権行使という看板を掲げることにこだわり続けています。しかし、いかに集団的自衛権を美化しようとも、自国防衛には結び付かない代物である本質に頭を巡らせていないことは誠に残念であります。
国連発足以来、集団的自衛権行使として報告あったものは十四例あります。その中に、純粋に自国防衛と見られるものはただの一例も含まれておりません。典型例は、一九五六年のハンガリー動乱の際のソ連軍の軍事介入、六八年のソ連軍のチェコ侵攻、八〇年のソ連軍のアフガン侵攻、そして六五年のアメリカなどによる南ベトナムへの軍事介入などであります。今回の法律が成立すれば、我が国もこうした旧ソ連やアメリカと同様の軍事介入を行う法手続が整備されることになります。
集団的自衛権行使の前提として、攻撃被害国からの要請又は同意の存在が国際法上の要件とされると政府は説明しておりますが、それはなぜか。今挙げた過去の報告例を見れば、容易にその理由が分かります。集団的自衛権の行使とは、他国からの要請又は同意を口実にして、自国防衛とは無縁の軍事介入について侵略や先制攻撃のそしりを免れるためのものでしかないということが誰の目にも明らかであります。
憲法が容認しない集団的自衛権を認めさせようとするならば、今回のように憲法解釈の変更によるのではなくて、正面から憲法改正を国民に訴えて実現すべきであるという意見があります。憲法論からそれは誠に正論であります。しかし、私は、過去の集団的自衛権行使の実例を見る限り、こうした他国への軍事介入を可能にする制度を導入することは、憲法論以前に、我が国の安全を維持する政策の基本としても合理性は認められないので、このような憲法改正にも私は反対でございます。
個別的自衛権の拡大解釈こそ危険な方向であり、戦前の日本を想起して、いつか来た危険な道だと吹聴する軍事専門家がおられます。私に言わせれば、個別的自衛権の拡大解釈にも危険性があるが、一方で、集団的自衛権の世界に踏み出せば、もはや自国防衛の目的という歯止めさえも吹き飛んでしまい、他国からの要請や同意さえ口実にすれば、先制攻撃や侵攻さえも正当化されるという恐ろしいリーサルウエポンを政府は手にすることになります。
実際、国連に対する加盟国の武力行使報告例では、集団的自衛権行使を理由とする少数の例外を除けば、単に自衛権行使又は自衛の措置とのみ報告するのが通例となっています。国際社会において自国防衛として理解を得られる限りは、あえてそれ以上に個別的と集団的とを区別する実益など全くないのです。
逆に言えば、存立危機事態による武力行使を自国防衛のための集団的自衛権と政府は繰り返し説明しますが、現実の世界には自国防衛のための集団的自衛権とか他国防衛を目的としない集団的自衛権などは実在しないんです。政府は、存立危機事態における我が国の武力行使は、常に他国からの要請が要件であるとしています。考えてもみてください、皆さん。自国の存立危機に当たって、他国からの要請がなければ立ち上がることができないとすれば、まさに座して死を待つことにつながってしまいます。この点においても、政府の説明する集団的自衛権は、実は、真に我が国の自国防衛を目的とするものとはなり得ないことを示しています。
政府案に対して、維新の党は、憲法適合性の中で日本の安全保障を考える立場から、独自の対案を国会に提出して、自民、公明両党との間で二か月にわたり修正協議を行ってまいりました。与党との間で問題意識が共有された部分も幾つかありますが、政府案法文への修正を求める我々の立場からは、政府・与党の対応はゼロ回答と言わざるを得ず、残念ながら最終的に協議を打ち切りました。
今回の法制が成立し施行されれば、直ちに、違憲を訴える多くの訴訟が提起されることが予想されます。また、政府案の違憲性を指摘している我々野党の立場からは、今後ともこの法制を正当なものと認めることはあり得ません。そうだとすれば、法曹界も学界も大半が違憲の立場に立っていますから、司法判断は全く予断を許しません。それでは、本来の国の基本であるべき法律制度が、司法権との間でも、立法権の内部でも、前代未聞の甚だしく法的安定性を欠いた状態に突入してしまいます。このような人騒がせな事態に全ての国民と自衛隊の皆さんをさらすことになる責任の重大性を、政府は深刻に受け止めるべきです。
国民の皆さんから負託を受けて一人一人が胸に付けている参議院議員のバッジは、はかりで量れば十グラムにも達しません。しかし、国家が危険な方向に進もうとする際に、それを食い止めるために我々が果たすべき責任は、一身で担い切れないほどの重さがあります。今、我々は、一人一人の判断と行動の責任が後の日までも問われるような重大な選択の場に立っています。


それでも、この法案は、多数派の力をもって間もなく可決、成立することになるでしょう。私は、与野党の区別なく、安全保障に対する見識と憲法遵守の良識をしっかりと共有できる全ての同僚議員と連携して、一日も早く政権交代を実現して国家の危機的事態を解消しなければならないと思っています。そうでなければ、この真夜中に、そぼ降る雨の中で、国会を取り囲んで法案の成立阻止を念願する数万、いや、全国の数え切れないほどの多くの国民の皆さんに対する政治の責任を果たすことができないではありませんか、皆さん。
我々維新の党は、憲法違反の疑いを顧みずに海外への軍事介入への道を突き進む安倍政権の手から、国家の平和と国民の安全を取り戻す決意であることをお約束して、私の反対討論を終わります。
御清聴どうもありがとうございました。


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審議の様子はこちらでご覧いただけます
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php