政策

消費税・原発・自衛権に関する見解

平成26年9月26日

消費税増税に関する見解

今後の社会保障経費の増大等に応じて、いずれ消費税増税が必要となりうることは否定しないが、このタイミングでの更なる増税には反対する。政府・与党ともに「増税の前にやるべきことがある」。

1.更なる増税に堪えうる経済体力にない

国家運営は、既定路線を単に踏襲するのではなく、時々の状況変化に応じて臨機応変に「経営判断」するのが基本である。
その意味で、8%への増税後の経済指標をみると、4~6月期の大幅な反動減(年率▼7.1%・大震災直後以来)に加え、7月の家計調査では、安倍政権が6月にボーナスが出て上向くとしていた消費も、10カ月連続サラリーマン世帯の実質収入が大幅に低下(▼6.2%)、増税と物価上昇で世帯の可処分所得が減り、消費支出も大幅減(▼5.9%)となった。これは、単なる「駆け込み需要」(1~3月期)の「反動減」とは言えず、実質所得の落ち込みで「購買力」「消費マインド」が落ちているという構造的問題だと深刻にとらえなければならない。7~9月期の指標を注意深く分析する必要があるが、経済の体力からして増税できる状況にはない。
将来的な増税の必要性までを否定するものではないが、現在の経済状況下での消費税増税の強行は、むしろ「アベノミクス失敗」への決定的な引き金を引くものとなりかねない。

2.増税の前に、安倍政権・与党は議員定数削減の約束を守るべき

一昨年に決定された社会保障・税一体改革大綱では、議員定数削減など国会議員自らが身を切る改革を実施したうえで、消費税を引き上げるべきとしている。さらに、安倍総理は、一昨年秋の国会での党首討論で、議員定数削減を必ず実現すると約束した。この約束は未だに果たされず、検討のための第三者機関を設けたのみである。

3.増税の前に、政府はバラマキと歳出膨張を止めるべき

政府による歳出のムダ削減も全く不十分である。まず、消費増税分は社会保障経費に充てると言いながら、実際は、ムダな公共事業をバラマキ(補正予算等を入れて例年の倍の10兆円規模)、かつ、執行しきれず数兆円の使い残しが出ているのが現状である。
公共事業以外でも、消化しきれない巨額の基金が天下り法人にたまったままで、一部の既得権益層を潤すだけになっている。さらに、復興予算を復興以外の支出に流用して国民の財政への信頼を失わせる等、政府はムダ削減の努力をするどころか、むしろ財政規律を緩めたバラマキを行っている。

4.財政再建には「経済成長」「歳出削減」「増税」のベストミックスが必要

財政再建は「経済成長」と「歳出削減」と「増税」のベストミックスで成し遂げられる。米ハーバード大のアルベルト・アレシナ教授の研究では、経済成長を損なわない財政再建のためのベストミックスは「増税:歳出削減=3:7」の比率であるとする「アレシナの黄金律」を唱えている。
「増税」という手法を全否定するものではないが、1000兆円になんなんとする借金を増税(消費税換算で400%分)だけで返せるはずもなく、「金の卵を産むがちょう」(財政再建のエンジンたる経済成長)を殺してしまっては元も子もない。
政府は増税の必要性ばかり強調する一方、「増税:歳出削減=3:7」の7にあたる「歳出削減」には全く手つかずのまま放置している。消費税8%→10%への引上げで得る年間の増収分5兆円程度は、議員や公務員の「身を切る改革」や歳出削減により賄うのが当然である。それすらも実行せずに増税でカネを吸い上げ、あまつさえバラマキで歳出を膨らますのでは言語道断である。
なお、歳出削減にあたっては、これまでの政治が聖域化してきた社会保障費や地方交付税交付金にも大胆なメスを入れていく必要がある。既成政党にはできない徹底した歳出削減を維新の党は提起していく。

原発政策に関する見解

東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、維新の党は、原子力発電に頼らない社会を実現するため、電力の再編自由化や原発推進施策の廃止等による市場メカニズムと再生可能エネルギーの普及促進等によって原発依存を減らし、最終的には原発をフェードアウトすることを基本方針としている。
ただ、持続的な日本経済の成長と国民生活への影響、代替エネルギーの安定供給見通し等を総合的に勘案すると、「原発即ゼロ」を声高に叫ぶのは政治的に責任ある対応とは言えない。したがって、脱原発依存を実現する過程において、安全性確保を大前提として、どうしても必要となる場合の原発再稼働は否定するものではない。
しかしながら、世界最悪レベルの事故の発生国として二度と同様の事故を起こしてはならず、原発稼働の安全性、事故リスクへの対処には万全にも万全を期さなければならない。また、使用済み核燃料の貯蔵容量が数年分しかないと言われる中で、処分方法の目途も立たないまま再稼働により核のゴミを増やすのは無責任の誹りを免れない。
現存する原発については、少なくとも以下5つの問題を解決し、国民の不安を払拭しない限り、再稼働を認めることはできない。それにともなう電気料金の上昇は短期的には社会的コストとして受け容れなければならないが、一方で、LNGの調達コストの低減等によるLNGコンバインドサイクルの推進、火力発電所のリプレースによる高効率化、「総括原価主義」の見直しなどでそれを抑える取り組みを進めるべきである。

1.欠陥だらけの新基準による審査制度

事故時の避難計画について米国では再稼働の審査対象となっているが、日本では、原子力規制委員会が原子力災害対策指針を示すだけで、肝心の計画策定は災害対策基本法で自治体任せになっている。そのため、避難計画の策定は遅れており安全を担保できていない。また、新基準では事故時のフィルター付きベントや免震重要棟の設置を義務付けているが、加圧水型には猶予期間が設けられており再稼働の前提条件となっていない。

2.再稼働の安全性を保証する責任主体が明確でない

原子力規制委員会は新規制基準への適合を審査するだけで、「安全とは言わない。再稼働の判断はしない」と田中委員長自らが明言している。川内原発の再稼働に向けて国の責任を明確化する文書も発出されたが、「万が一の事故発生時には国が責任を持って対処する」と書かれているだけで、安全性の保証にはなっていない。

3.地元の同意の下地ができていない

原発事故を踏まえ、防災対策重点地域は半径8~10キロから30キロ圏に拡大されたが、再稼働の前提となる地元の同意についての「地元」の定義が法的に規定されていない。そのため、再稼働の手続きで必要な「地元の同意」を得る過程で混乱が生じている。

4.見通しがついていない最終処分場

政府は国主導で使用済み核燃料の最終処分場の選定に取り組む方針を示しているが、その目途は全く立っていない。処理方法の確立や場所選定までの行程表の提示もできていない状況で再稼働によって核のゴミを増やすことは、まさに「トイレのないマンション」という批判を免れることはできず、また、最終処分場設置の国民の理解と協力をさらに困難にする。
最終処分場の問題の解決をめざすと同時に、最終処分の必要な使用済み核燃料の発生を劇的に減らす可能性のある統合型高速炉(IFR)をはじめ小型原子炉などの新技術の可能性を見極めるべく、研究動向を注視する必要がある。

5.原子力損害賠償法の見直しが前提

原子力損害賠償支援機構法成立時に付帯決議で約束された原倍法の見直し作業は進んでおらず、事故時の賠償の責任の在り方について、国民が納得できるルールが定まっていない。

とくに、年内の再稼働が検討されている川内原発については、原子力規制委員会の審査を通過したとはいえ、以下の3つの理由で、現時点では再稼働を認める状況に至っていない。

1.避難計画が不十分である

原子力災害対策指針にのっとり川内原発周辺30キロ圏内の9市町村は避難計画を作成しているが、避難経路(狭隘な道路等)の安全性確保や、病院・福祉施設などの要援護者の避難方法、避難受け入れ先の自治体の対応などの計画は不十分で、その実効性が疑われる。

2.地元の同意が得られていない

再稼働の前提となる地元の同意について、鹿児島県や九州電力は立地自治体の同意だけで十分と主張しているが、防災対策重点地域である30キロ圏内の自治体からはすでに再稼働反対の意見書が出されており、意見が分かれている。

3.火山噴火、事故対応設備の不安が払拭できていない

川内原発の近距離に位置する桜島を含む姶良カルデラなどの大規模噴火の可能性は低いと判断した規制委の審査について、火山研究者からは多くの疑義があがっている。また、免震重要棟の完成は1年後、フィルター付きベント設備の完成は2年後であり、未設置のまま再稼働されることになってしまう。

自衛権に関する見解

1.現状認識

現在、世界をめぐる国際情勢・安全保障環境は複雑さを増している。国際社会のパワーバランスが変化する中、アジア太平洋地域の重要性が急速に高まり、地域の平和・安全を確保する基軸としての日米同盟の意義は益々重くなっている。特に北東アジア地域では、大規模な軍事力を有する国などが存在する一方、国際社会が懸念する中で核開発を強行する国家も存在し、領域主権や権益等をめぐる対立も見られる。国家間の相互依存関係が拡大・深化する中、このような不安定な状況は、我が国の平和と無関係ではなく、即時に国民の安全に重大な影響を及ぼし得るものとなっている。

2.「自衛権の再定義」が必要

維新の党は、我が国の領土・領海・領空、国民の生命・財産を守るため、平和主義を掲げる憲法の理念を踏まえながらも、現実的に出来うる限りの対応をしていく。 とりわけ、より即応性が求められる昨今の核・ミサイル技術の進展等を含む安全保障環境の変化に応じ、「自衛権の再定義」が必要だと考える。
従来からの日本政府見解では、自国に対する武力攻撃が発生したか否かで個別的および集団的自衛権を区別し、憲法で認められるのはこの定義に沿った個別的自衛権のみとしてきた。
他方、憲法に定められた日本国民の平和的生存権や生命、自由及び幸福の追求権の趣旨を鑑みれば、仮に、我が国が直接的に武力攻撃を受けていない状況下であっても、密接な関係にある他国に対する攻撃の結果、我が国に戦火が及ぶ蓋然性が相当に高く、国民がこうむることとなる犠牲も深刻なものになる場合には、それを阻止し我が国を防衛するために「自衛権」を行使することは憲法解釈として許容されるものと考えられる。これを「自衛権の範囲の明確化」、すなわち「自衛権の再定義」と呼ぶ。

3.「自衛権」行使における歯止め

ここで再定義された現行憲法が認める自衛権は、純粋な他国防衛のための自衛権の行使を認めるものではなく、国連決議もない他国の戦争に加わることに道を開くものでは断じてない。
本定義に基づく同盟協力の具体的見直しも必須であるが、まずは自らを守る体制の整備と、外交努力や信頼醸成による脅威の低減に率先して取り組むべきである。とりわけ島嶼防衛等における武力攻撃に至らない侵害への対応、いわゆるグレーゾーン事態への対処は、喫緊の領域警備の課題として取り組む必要がある。また、再定義された自衛の措置が、国連による集団安全保障に移ったとしても認められよう。

4.憲法保障と法制度の整備

維新の党は、再定義された自衛の措置に関しては範囲の拡大や濫用を防ぐべく歯止めを掛け、憲法の制約と安全保障の要請を精緻に判断した上で包括的な法整備に取り組むこととする。
なお、三権分立の確立と憲法保障の観点から、憲法の解釈に際しては憲法裁判所もしくは最高裁判所の憲法部等の抽象的な憲法判断を担う司法機関によることが本来必要であり、維新の党はその実現に邁進する。
いずれにせよ、現行の枠組みにおいては、国権の最高機関である国会において、責任ある議論を行っていく。