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7月16日(木) 衆院本会議 安保法制 討論全文

平成27年7月16日(木)、衆議院本会議で行なわれた安保法制に関する松野頼久代表の討論の全文です。


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安保法制本会議討論(文案)


維新の党の松野頼久です。


(我が党の立場と昨日の強行採決)
まず、冒頭に申し上げます。昨日の特別委員会において、国民の理解が得られるまで、十分な審議をするべきと要望したにもかかわらず、そうした声には全く耳を貸さず、巨大与党が数の力に頼んで強硬採決を行ったことはまさに暴挙であり、国民への裏切り行為と言わざるを得ません。


我々維新の党は、何でも反対の抵抗野党ではありません。国政に責任ある野党として、我々は、自らの考えをまとめた独自案を提出しました。平和安全特別委員会の審議は一度も拒否しておりません。


この維新案は7月8日に衆議院に提出されてから、平和安全特別委員会で、政府案との並行審議が行われてきました。質問時間は、どれほど多く見ても、せいぜい6時間余りにすぎません。また、自民党・公明党との修正協議も、今後も継続する予定です。


このように、並行審議は始まったばかりで、安倍総理も石破大臣も塩崎大臣も認める通り、政府案への国民の理解は得られていません。そんな中、審議を打ち切り、強行採決を行ったことは、言語道断の暴挙です。審議を続ければ続けるほど、国民の支持が離れることを恐れたのでしょうか?独自案を提出し、与党とも協議し、責任ある態度を示してきた野党を実質的に無視する暴挙を許すことはできません。
従って、政府案の採決には応じられないということを申し上げておきます。


(時代状況等)
さて、先の大戦が終わってから70年になります。日本は、この間、平和国家としての道を一貫して歩んできました。その平和国家日本のあり方が、今、根本的に変えられようとしています。この戦後日本の歴史的な転換点に、国会で議論をする者の責務は、誠に重いものがあります。


我々維新の党は、この日本と日本国民を守るために我々が最善と信じる、安保法制に関する独自案を、衆議院に提出しました。以下、政府案の問題点を指摘し、維新案に賛成する趣旨の討論を行います。


(自衛隊法等の改正法案:政府案について)
これまでの質疑での最大の問題点は、憲法上禁じられてきた、集団的自衛権の行使を、新たに合憲と認めるために政府が示した要件です。政府は、集団的自衛権行使を、あくまで限定的に認める、厳しい要件でのみ認める、だから合憲だ、と言ってきたはずです。ところが、実際に出てきた条文はどうでしょう。


集団的自衛権の限定行使の根拠になる「存立危機事態」の文言には、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」とあります。この文言の意味は、一体何なのか。

政府答弁によれば、石油の途絶に伴う事態も、天然ガスやウランの途絶に伴う事態も、サイバー攻撃でアメリカ社会が混乱して日本に危機が及ぶ事態も含まれます。このように、日本に武力攻撃の危機が当面ない事態まで、含まれうる、ということです。文言が極めて曖昧なため、歯止めは実質的にないも同然です。時の政権の恣意的な判断で、武力行使が可能になることが、明らかになりました。


これでは、多くの憲法学者も、歴代の内閣法制局長官経験者も、憲法違反であるとの懸念を表明されるのは当然のことです。大森元内閣法制局長官が言われる通り、「現実にはほとんど制限的作用を果たさない、まやかしの要件を設定したにすぎない」条文です。このため、国民の不安も高まる一方です。審議日数を重ねれば重ねるほど、今国会での法案成立に反対の声が増えています。


そのうえ、自衛権行使について地理的制約もありません。これでは、ホルムズ海峡を含む、世界のあらゆる場所に、それこそ、地球の裏側まで、自衛隊を出動させることになります。これまで自国防衛に徹して、「専守防衛」の原則を守ってきた自衛隊のあり方を、根本的に変えることになります。


(自衛隊法等の改正法案:維新案について)
我々維新の党は、我が国の周辺の現状を見れば、安保法制の改革は必要と考えています。東アジア地域では、中国が毎年軍事費を増やしており、東シナ海、南シナ海に海洋進出を続け、力による現状変更を試みています。北朝鮮は、弾道ミサイルに搭載可能な小型核弾頭の開発に成功したとも伝えられています。今後一層、日米同盟を強化し、自由と民主主義等の価値観を共有する諸国との連携を進める必要があります。日本周辺でのこうした状況を見れば、何よりも自国の防衛を大事にしてほしい、というのが、国民の切なる願いのはずです。


日本を守るために必要な、日米のチームワークの強化。一方で、あらゆる法律に当然必要な、憲法適合性。この二つを両立させるため、維新の党は、「武力攻撃危機事態」という概念を提示しております。即ち、条約にもとづき、我が国周辺の地域で、現に日本を防衛している外国軍が攻撃を受け、我が国に戦火が及ぶ、すなわち、我が国が武力攻撃を受ける明白な危険があるときに限り、日本が自衛権を発動できるとこととしました。


維新の党案は、明確な文言により、自国防衛を徹底して行うという安全保障上の哲学を、法律の条文に具体的に書き込みました。他国防衛を目的とする集団的自衛権は認めません。認めるのは、我が国を防衛する外国軍への第一撃を、我が国自身に対する武力攻撃の明白な危険があるとして、自国防衛のために行使される自衛権です。この維新案の「武力攻撃危機事態」の要件を、憲法学者や内閣法制局長官経験者も、従来の憲法解釈の枠内にあるもので合憲と評価しています。


また、自衛権行使につながる防衛出動は、幸い一度も下令されたことはありません。しかしそれだけに、その国会承認は、きわめて重い意味を持ちます。したがって、国会承認については、審査を、より厳格で実質的なものにするため、特定秘密を含む情報の提供を受ける専門委員会を国会に設けることを目指しています。


(周辺事態法の改正、重要影響事態法案)
政府提出の重要影響事態法案は、周辺事態法の「周辺」の概念を放棄して、法律上、まさに「地球の裏側」まで自衛隊が派遣できるようになります。そのうえ、武力行使と一体化しかねない、弾薬提供や戦闘作戦のために発進準備中の航空機への給油等を可能にしています。


これに対し、維新案では、周辺事態法の、「周辺」の概念を堅持し、地理的制約があることを明確にしています。日米安保条約の極東条項に関する政府統一見解、つまり、「大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び台湾地域」を越えることはありません。極東周辺の南シナ海は、我が国防衛と密接に関連している場合には、活動範囲に含まれると考えます。しかし、常識的には、中東やアフリカ等は含まれません。維新案では、弾薬提供等も行いません。


(国際平和支援法案:維新案と政府案について)
次に、国際平和支援法案についてです。維新案は、我が自衛隊が後方支援する多国籍軍の、国際法上の正当性を、何より大切にしております。これまで特措法で対応してきた内容で、国際的にも国内的にも正当性のある法理を、恒久法としています。それ以外の場合には、その都度、特措法を制定して、国民に同意を求めることを原則としました。


維新案では、国連憲章の第7章決議にもとづく多国籍軍のみを、支援対象としています。国際法上、武力行使を伴う軍隊を他国領土に派遣できるのは、この決議があった場合のみ、という原則を遵守したものです。政府案のように、国連総会でのいわゆる「関連決議」による多国籍軍への支援は、必要ならば、特措法で対応します。また、活動地域は従来通り非戦闘地域のみとします。


(領域警備法案:維新・民主案について)
次に、領域警備について、政府案では、日本周辺の領海、領空等での、いわゆるグレーゾーン警備への法的な対応がなされていません。そこで維新の党は、民主党と共同で、領域警備法案を提出しました。政府は、海上警備行動等の下令の迅速化のために、電話による閣議決定を行う等、わずかな運用変更にとどめております。維新・民主案では、海自が、あらかじめ海保と協力するための仕組みとして、海上警備準備行動を創設するなど、迅速に対応できるようにしました。領域警備は警察機関が第一義的に対応するという原則を堅持しながら、自衛隊の能力を最大限活用していくことを目指しています。


(最後に)
最後になりますが、我々維新の党は、今後も責任ある野党の立場で、安保法制の議論に臨んでいきます。冒頭申し述べましたような、昨日の委員会採決の暴挙に対してさえ、維新の党は、自らが出した法案の採決には出席し、政府案の採決のみ、抗議の意思を示すため、退席しました。


平和安全特別委員会での強行採決について、あらためて厳重に抗議し、同委員会での対応同様、維新の党独自案の採決には出席して賛成し、政府案の採決は抗議の趣旨で退席することを表明し、討論といたします。
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審議の様子はこちらでご覧いただけます
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=45150&media_type=