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9月18日(金) 参院本会議 中谷防衛大臣問責決議案 賛成討論全文

平成27年9月18日(金)参議院本会議で行なわれた、中谷防衛大臣問責決議案に対する儀間光男 参議院幹事長代理の賛成討論の全文です。


討論の様子(儀間)

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中谷防衛大臣問責決議案 賛成討論 全文(文案)


2015年9月18日
参議院議員 儀間光男


維新の党を代表して、中谷防衛大臣への問責決議案への賛成討論を行います。中谷防衛大臣、あなたはすでに集団的自衛権の限定容認が閣議決定された後の、昨年12月に防衛大臣に就任したのですから、まさに政府の安全保障法制の成立を担うために起用されたわけです。国家・国民の命運を大きく左右する法案ですから、中谷大臣の責任も自ずと重大なものであるはずです。そして、5月から法案の審議が始まりましたが、中谷防衛大臣、あなたの安保法制に関する答弁や発言は、残念ながら国民の不安と不信を増幅するものでした。


衆議院での審議は、中谷大臣の「武力行使と武器使用の区別がつかないなら議論はできない」との答弁を、質問者に陳謝するところから始まりました。


参議院の審議に入っても、不安定で矛盾した答弁が続きます。


米軍行動関連措置法改正案における自衛隊の安全確保措置については、一旦、「安全確保に必要な措置は法案に明記されている」と答弁した後、質問を受けるたびに「規定はない」、「必要な措置を盛り込む」と答弁が二転三転し、審議が紛糾しました。


防衛省の内部資料に、南スーダンPKO活動で来年2月にも、「駆け付け警護」を始めるという法案内容を先取りした想定が明記されていた問題について、中谷大臣は「必要な分析、研究を行ったものだ」と釈明していますが、「分析、研究」の範囲を逸脱しているのは明らかです。大臣の「国会の審議中に法案の内容を先取りするようなことは控えなければならない」とした以前の答弁とも矛盾します。


劣化ウラン弾の輸送については、当初、自衛隊が米軍に対する後方支援として「劣化ウラン弾を輸送しないこと」を米側と協議していると説明していましたが、その後、「協議はしていない。非常に不正確な答弁だった」と撤回。これでは国会の場で完全に虚偽の答弁をしていると言われても仕方ありません。


そして、9月14日の集中審議では、「法案が成立したら、内容を把握して検討する」と「法案成立ありき」を公言した本末転倒の答弁。これでは、一体何のための国会審議なのでしょうか。


理解不足のため目まぐるしく変わる答弁、矛盾した答弁、虚偽の答弁。そして国会審議自体を否定するような答弁。中谷大臣の答弁のために、一体何十回審議が止まったでしょうか。審議中も答弁補助者からレクチャーを受けなければ答弁に立てないのでは、とても大臣の資格があるとは思えません。


そして、安保法案自体の理解が不十分であるだけでなく、基本的な憲法原理についても認識が不十分で、大臣として明らかに見識が不足していることも露呈しました。


まず、「文民統制」についての認識です。防衛省設置法を改正し、防衛省の官房長及び局長が、幕僚長より優位に立つ「文官統制」の根拠とされてきた規定を見直した際の会見で、中谷大臣は、これにより「文民統制」(シビリアンコントロール)の強化につながるという認識を示しました。文官統制の見直しが、国会や内閣による「文民統制」の緩和につながり、国民の自衛隊に対する信頼が大きく揺らぐようなことがあってはならないと危惧されているときに、大臣がこのような認識で良いのでしょうか。軍部の台頭を追認する形で後戻りできない戦争になだれ込んだ過去の歴史を繰り返さないよう、戦後一貫して守られてきたわが国の厳格すぎるほど厳格な「文民統制」。これを何としても堅持するという矜持があるのか、疑問を持たざるを得ません。

次に、法案の「憲法適合性」に関する認識です。今回の安保法案が、「専守防衛」の理念の下、戦後一貫して積み上げてきた憲法解釈に照らし、違憲性の疑いが極めて濃厚な法案であるというのは、もはや、動かしがたい事実になりつつあります。6月4日の衆院憲法審査会で、自民党推薦の長谷部恭男先生をはじめ、小林節先生、笹田栄司先生という、日本を代表する憲法学者3人が揃って「憲法違反」と断じ、引き続く6月22日の衆院特別委員会の参考人質疑では、内閣法制局の歴代長官である阪田雅裕氏、宮崎礼壹(れいいち)氏も違憲性を次々に指摘しました。実際に政府内で憲法の解釈を司ってきた内閣法制局長官経験者の「違憲」の指摘に対して、政府与党は「合憲性の最終的な判断権を有するのは最高裁だ」と反論してきましたが、今やその最高裁長官経験者までがついに「集団的自衛権の行使を認める立法は憲法違反と言わざるを得ない」と明言するに至っています。これに対して、中谷防衛大臣は、「現役を引退された一私人の発言」と切って捨てました。最高裁判所も、これらの専門家と基本的に同じ憲法理論で判断する以上、これらの専門家の意見を一顧だにしない姿勢は憲法軽視と言わざるをえません。


さらに、中谷大臣の「立憲主義」の理解には、重大な疑義があります。大臣は、6月の衆議院での安保法案の審議において、「現在の憲法をいかに法案に適応させればいいかという議論を踏まえて閣議決定した」という驚くべき発言をしています。「法律によって憲法解釈を変える、あるいは憲法を骨抜きにする」ことを閣議決定の前に話し合っていたと、防衛大臣が堂々と国会で公言したわけです。これでは、憲法と法律の優劣が逆転してしまうことは誰の目にも明らかです。憲法98条が規定する憲法の「最高法規性」、憲法99条の国務大臣の憲法尊重擁護義務、そして、これらの背景にある「立憲主義」の原理への理解が全く欠落しているとしか思えません。「憲政史上最悪の発言」といっても過言ではありません。


このように、中谷大臣は、先人たちが多くの血と汗と涙を流して確立した「文民統制」や「立憲主義」など、不断の努力で積み上げられてきた憲法理論を軽んじ、違憲の法案を制定しようとしています。我々としても、このまま立憲政治が汚されて良いのか、戦後、今ほど議会人としての矜持が問われているときはありません。


中谷大臣の憲法原理への無理解や国会審議に対する不誠実な姿勢は、国民の理解度に関する世論調査にも表れています。審議入りの時点での5月の(産経新聞の)世論調査では、政府提出の安全保障関連法案について、「よく理解している」と「ある程度理解している」の合計が53.5%。参院での審議が進むなかでの、直近の8月の(同社の)世論調査では、「よく理解している」と「ある程度理解している」の合計が48.3%。上がるどころか、5ポイント以上も下落しています。安保法制の国民の理解は深まっておらず、安倍政権、なかでも中心となって答弁してきた中谷防衛大臣が、果たすべき説明責任を果たせなかったことは明らかではないですか。


今回の安保法案は、日本の自衛隊が海外の戦地やその周辺で武力の行使や武器の使用に及び、他国民を軍民問わず殺傷したり、反対に隊員自らが危害を加えられたりする、そうした可能性を持った法律です。そのような日本の平和主義を根底から揺るがしかねない可能性を持つ法律の運用にあたるのが、こんな見識も覚悟にも欠けた大臣だというのであれば、恐くてとても安心してお任せできない、国民はそう思ったに違いありません。


以上、誠実さと憲法原理の理解に欠ける答弁を繰り返し、違憲の法律を制定するという憲政史に大きな汚点を残そうとしている中谷防衛大臣の責任は極めて重く、このことをもって、問責決議案への賛成理由といたします。


最後に一言申し上げます。維新の党は、単に政府案に反対するのではなく、憲法適合性の高い対案を出しており、建設的な議論が出来るよう努力した唯一の野党です。今後も、身を捨ててでも、理念と政策を軸とした改革に意を決して取り組む。その事を、この場を借りて国民の皆様にお約束申し上げ、中谷防衛大臣に対する問責決議案への賛成討論とさせていただきます。


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審議の様子はこちらでご覧いただけます
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php